糸島が人気の理由は「程よい距離感」にあった

出かける福岡

福岡市の隣にある日本海に面した糸島市が、最近移住先や観光地として大いに注目を集めています。でも、同じ様に海沿いの綺麗な場所や自然豊かなエリアは、日本各地にあるのに、なぜ糸島市がこんなに人気を高めているのか!?その理由が「都会すぎず!田舎すぎない!」という絶妙なバランスにあったのです。今回は、糸島が人気の理由を、移住者や観光客の視点から掘り下げていきます。

天神から40分。この「近さ」が全てを変えた

糸島が人気の理由を語る上で、まず外せないのが福岡市中心部へのアクセスの良さです。JR筑肥線を使えば、糸島の中心駅である筑前前原駅から天神まで乗り換えなしの直通約30分、博多駅まで約40分。この「程よい距離感」が、糸島の最大の魅力なんです。

都心とのこの距離感により、働きながら自然豊かな環境での暮らし。週末に海を見に行くのも、車で15分程度。平日は都会の便利さを享受しながら、休日は田舎でリフレッシュできる。この「二刀流のライフスタイルが実現できる理想的な環境」が糸島の魅力なのです!

「田舎暮らしに憧れるけど、買い物や病院が不便なのは困る」という人にとって、糸島はまさに理想的な選択肢になるのでしょう。「イオン糸島ショッピングセンター」など、複数の大型スーパーもあり、「糸島医師会病院(総合病院)」などの医療施設も充実しています。利便性の高い「田舎暮らし」という条件が整っているので、移住のハードルが低いのです。

ちなみに、2021年にイギリスの情報誌『MONOCLE』が発表した「住みやすい小さな街ランキング」で、糸島は世界3位に選ばれました。自然と利便性の調和した地域として世界的に評価されました。

1軒のカフェから始まった糸島ブームの正体

糸島が観光地として有名になったきっかけは、1990年に海沿いにオープンした1軒のカフェ「ビーチカフェ サンセット」が仕掛けた「サンセットライブ」という音楽フェスでした。それが今では九州を代表するイベントに成長し、糸島の〝知名度アップ〟につながったのです。

そして、このカフェで働いていたスタッフが独立し、次々とおしゃれなカフェを海沿いにオープンしました。この流れは計算されたものではなかったと思われますが、結果的に海を眺めながらコーヒーを飲めるカフェが点在する「インスタ映えスポット」が自然発生的に生まれ、人気を博したのです。

SNS時代にこれが見事にマッチしました。「糸島=おしゃれ」というイメージが確立されると、若者や女性客が殺到し、この地に移住してくるクリエイターや作家も増え、さらに魅力的な店が増えていくという好循環が、糸島を「普通の田舎」から「憧れの移住先」に変えたのでした。

加えて「天使の羽」のオブジェとか、夫婦岩の白い鳥居とか、写真映えするスポットが多いのも糸島の特徴です。これも意図的に作られたというより「映える場所を作ろう」という空気感が自然と広がった結果なのかもしれません。

「糸島ブランド」が示す食材への本気度

糸島が人気の理由として、食の豊かさも絶対に外せません。糸島の農産物や海産物は「糸島ブランド」として確立されており、2019年には牡蠣が地域団体商標に登録されました。

東京や大阪の有名レストランのシェフが、わざわざ糸島まで食材を買い付けに来るという話も聞きます。玄界灘で獲れる魚介類は、暖流と寒流がぶつかる漁場で育つため身が引き締まっていて味も濃厚のです。冬の風物詩である牡蠣小屋では、1キロ1000円という破格の値段で新鮮な牡蠣を食べられます。これこそ産地ならではです。

それから野菜。糸島の野菜は色が濃くて味がしっかりしていると評判で、JA直営の大型直売所「伊都菜彩」には連日多くの人が訪れます。地元の農家さんがトラックで野菜を福岡市内に売りに行く光景は昔からの風物詩で、福岡の人にとって「野菜=糸島」というイメージが強く根付いているのです。おそらく、この「地産地消」への意識の高さも、糸島の魅力を底上げしている要因の一つでしょう。レストランでも観光施設でも、とにかく地元食材を使おうとする姿勢が見えます。「地元を大切にする文化」が浸透しているのですね。

移住者を受け入れる「寛容さ」という隠れた魅力

糸島が人気の理由、最後にもう一つ挙げるとしたら、それは「人の温かさ」です。地方に移住すると、よそ者扱いされて馴染めないという話をよく聞きます。でも糸島は違う。移住者に対して驚くほど寛容なのです。

これにはちゃんと理由があります。糸島では昔から福祉施設が多く、地域コミュニティで助け合う文化が根付いているます。「困っている人がいたら助ける」という意識が、移住者に対しても自然と向けられるわけです。

実際、糸島で画家として活動している方の話を聞いたことがあるんですが、初個展に地元の人たちが家族連れで来てくれたり、口コミで広げてくれたりしたそうです。「行ってあげて」という優しい声かけが、田舎ならではの連鎖を生んだのでしょう。意外と知られていませんが、糸島は若い世代の起業率も高く、新しいチャレンジを歓迎する土壌が整っています。

あと、糸島には新しいことに挑戦する人が集まりやすい土壌もあります。前原商店街には期間限定で自分の店を開ける「ランタイム糸島」という施設があったり、クリエイターが集まる工房が100以上あったりします。新しい挑戦を応援してくれる雰囲気があります。これが、「糸島で何かやってみたい」と思わせる人たちを呼び寄せるのだと思います。人口が増え続けているのも、たぶんこの「受け入れる文化」が大きく影響しているのでしょう。

あえて不便なところといえば

ここまで糸島の良いところばかり話してきましたが、不便な面もあります。

まず、車がないと生活しづらい面があります。電車は市の中央を通るJR筑肥線のみで、バスも本数が少ないです。観光スポットは海沿いや山側に点在しているので、車なしで巡るのはかなり厳しいです。それと、駅から離れたエリアはスーパーやコンビニも少ないのです。便利さと自然、どちらを優先するかで住むエリアを選ぶ必要があるでしょう。

冬の海沿いは潮風が強く、体感温度が想像以上に下がります。「温暖な九州」というイメージで移住すると、ちょっとギャップを感じるかもしれません。

週末や観光シーズンの渋滞もあります。人気が出すぎた結果、道路が混雑して地元の人が困っているという話も聞きます。牡蠣小屋のシーズンは特にひどいですが、これらの不便さを「許容できる範囲」と感じる人が多いからこそ、糸島の人口は増え続けているのでしょう。

糸島が選ばれ続ける理由は「ちょうどいい」から

糸島が人気の理由は、都会と田舎の「ちょうどいいバランス」にあります。福岡市内へのアクセスの良さ、新鮮な食材、おしゃれなカフェ文化、そして移住者を受け入れる寛容な地域性などが複雑に絡み合って、今の糸島ブームを生み出しているのです。もちろん車が必要だったり、冬は寒かったりと不便な面もありますが、それを補って余りある魅力がある。完璧ではないけど、自分にとってはちょうどいいと思える人にとって、糸島はこれ以上ない場所なのかもしれません。あなたも一度、糸島の空気を感じてみてはどうでしょうか。

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