福岡市内から車で40分ほどで行ける糸島半島は、今や「食材の聖地」として知られています。ただの観光地ではなく、福岡のシェフたちがこぞって通う、本物の食材が集まる場所なのです。実は私も月に2度は朝早くから糸島へ向かうのですが、お目当ては新鮮な野菜と魚です。スーパーで買うのとは明らかに違う、あの味わいを知ってしまったら、もう戻れません。今回は糸島食材の何がそんなに特別なのか、実際に足を運んでみて感じたことをお伝えします。
日本一の産直市場「伊都菜彩」に朝イチで行くべき理由
糸島を語る上で外せないのが、JA糸島の「伊都菜彩」です。年間135万人が訪れる、産直施設としては日本一の売上を誇る場所です。初めて行った時は「えっ、これ全部糸島産?」と驚愕しました。
何がすごいのかというと、地場産が95%以上という徹底ぶりなのです。トマトひとつとっても、生産者の名前が書いてあり、それぞれ微妙に味が違うのです。
朝9時オープンなのですが、開店前から並んでる人もいるほどで、とくに週末の昼過ぎには人気の野菜が売り切れることもしばしばです。私は以前、のんびり午後3時頃に行って「あれ?棚スカスカじゃん…」という失敗をしてしました。それ以来、朝イチ派です。
ちなみに、登録生産者数は1,500名以上いて、専業農家だけではなく、高齢者や女性など多様な農業者が参加していて、定期的に残留農薬検査も実施しているそうです。安全面でも信頼できるのは大きいことです。
店内には糸島牛や糸島豚などの精肉コーナーもあります。BBQ前にここに寄れば食材は完璧に揃います。隣接する「まるいとうどん」で昼食を取るのも定番コースで、伊都菜彩で買ったお惣菜と組み合わせれば、贅沢なランチになります。
糸島が「食材の宝庫」と呼ばれるワケ〜海も山も豊か
糸島がなぜこれほど食材に恵まれているのかというと、答えはシンプルで、海と山の両方が近いからなのです。
玄界灘に面した糸島には12の漁港があり、天然真鯛の漁獲量は日本一なのです。5月から12月にかけて獲れる糸島真鯛は、潮の流れが速い海で育つため、筋肉質でプリプリです。お刺身で食べると、その弾力に驚きます。それと、伝統的な「吾智網漁」という弓なりの網で魚を追い込む漁法も現役で、すぐに氷締めするので鮮度が違います。
10月から4月のカキ小屋シーズンも有名です。対馬海流と脊振山系の栄養豊富な水が混ざり合う糸島の海で育った牡蠣は、大粒でミルキーで、焼きたてを頬張ると、磯の香りと甘みが口いっぱいに広がります。持ち込みOKのカキ小屋も多くて、お酒やおにぎりを持参して楽しむのが地元流です。
そのほか、山側では米・野菜・果物が豊富で、とくに柑橘類の品種の多さには目を見張ります。温州みかん、はるか、せとか、デコポンなど、冬から春にかけて直売所を覗くと、毎週のように違う柑橘が並んでるのです。「はるか」は糸島生まれの品種で、鮮やかな黄色の見た目に反して甘くて爽やかです。たまたま見つけて買ってみたのですが、その美味しさにすっかりハマりました。
また、山田錦という酒米も糸島の特産品で、白糸酒造では糸島産山田錦100%の日本酒を造っていますが、これがまたキレがあって美味しいのです。
プロのシェフたちが通いつめる理由〜「本物」を求めて
最近、東京や大阪の有名レストランのシェフが糸島を訪れる姿をよく見かけます。糸島市も「糸島ファームtoテーブル」という取り組みで、生産者とシェフを繋いでいるのです。バルニバービやレストランひらまつ、代官山ASOチェレステなど、名だたる店が糸島の生産者を訪問しています。
何がシェフたちを惹きつけるのか?ひとつは「顔が見える」ことです。生産者と直接話せるから、どんな想いで作っているのか、どういう育て方をしているのかが分かります。これは料理人にとっては大事なポイントらしいのです。
もうひとつは「希少性」です。糸島には大量生産じゃない、少量でも質にこだわった食材が多いのです。たとえば「二丈赤米」は農薬や化学肥料をほとんど使わない古代米で、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールが豊富で、健康志向のレストランで重宝されています。ジビエや卵、ヨーグルト、希少野菜、ハーブ類など、「伊都菜彩」以外にも個性的な生産者が点在していて、シェフたちは何度も足を運んで新しい食材を発掘しているそうです。
おそらく、都市部では手に入らない「本物の味」を求めているのでしょうね。糸島が福岡市内から近いのも大きい理由です。日帰りで仕入れに来られる距離感が、シェフたちにとってちょうどいいのかもしれません。余談ですが、糸島の生産者さんに気さくな人が多いのです。直売所で話しかけると、オススメの食べ方とか教えてくれます。そういう人と人との繋がりも、糸島食材の魅力のひとつだと感じます。
実際に巡ってみた「朝型ドライブ」ルート
糸島食材を存分に楽しみたいなら、早起きして朝から巡るのが一番です。実際、私がいつもやってるルートをご紹介します。
まず9時に「トラヤミートセンター」へ行きます。糸島産の牛・豚・鶏はもちろん、イノシシやジビエ、カエル、ワニまで揃う肉の博物館みたいな店です。部位も細かく選べるし、塊肉をミンチにしてもらうこともできるし、惣菜コーナーの「メンチカツ」が絶品で、つい買い食いしてしまいます。
それから「伊都菜彩」で野菜と魚をゲットします。ここは何度行っても飽きません。季節ごとに旬の食材が入れ替わるので、毎回新しい発見があります。パンが好きなら「Continue.」もおすすめです。自家製酵母を使った全粒粉やライ麦のパンが並んでいて、噛むほどに穀物の味が広がります。朝イチで行くと焼きたてに出会えることもあります。
魚狙いなら「福ふくの里」は外せません。福吉漁港直送の魚が並んでいて、週末は昼頃に売り切れることもあります。敷地内のレストラン「旬菜旬魚ふくふく」で海鮮丼を食べるのも幸せな時間です。
ちなみに最後に「お菓子と暮らしの物 りた」でひと休みすると、オーガニック野菜や果物を使った無添加のかき氷やスイーツが楽しめます。もともと材木置き場だった建物を改装していて、天井が高くて開放的で、買い物の締めくくりにぴったりです。クーラーバッグを持って、こんな感じで巡ると糸島の食材が一気に揃います。なので、スーパー3軒回るより楽しいし、確実に美味しいものが手に入ります。
糸島食材は「足を運ぶ価値」がある
糸島食材の魅力は、鮮度や品質だけではなく、生産者の顔が見えること、多様な食材が一箇所に集まっていること、そして何より「本物の味」が楽しめることにあります。プロのシェフたちが通いつめるのも納得です。
朝早く起きて産直市場を巡るのは少し手間かもしれません。でも、そこで出会う食材の美味しさは、その手間を遥かに超える価値があります。糸島まで足を運べない方も、一部の食材はオンラインで購入できるので、まずは気になるものから試してみてはいかがでしょうか。きっと、その違いに驚くはずです。

