福岡に初めて来た友人に「博多と天神って何が違うの?」と聞かれて、一瞬言葉に詰まってしまった経験があります。福岡空港なのに博多駅。天神も博多も福岡市内。県外の人からすると「え、結局どういうこと?」となるのも無理はありません。実は地元民でさえ、その違いをうまく説明できない人は少なくないんですよね。今回は、歴史的背景から現代の使い分けまで、わかりやすく整理してみました。
そもそも博多と天神は「別の町」だった
まず知っておきたいのは、博多と天神(福岡)は江戸時代まで完全に別の町だったという事実です。那珂川という川を境に、東側が「博多」、西側が「福岡」と呼ばれていました。
博多は奈良時代から続く商人の町。貿易港として栄え、博多商人と呼ばれる裕福な商人たちが活躍していました。対して福岡は、関ヶ原の戦いの後に黒田長政が築いた城下町です。武士が暮らす新しい町だったんですね。
要するに、商人文化の博多と武士文化の福岡。性格がまったく異なる二つの町が、たまたま川を挟んで隣り合っていたわけです。これ、意外と知られていないんじゃないでしょうか。
ちなみに黒田長政が「福岡」と名付けたのは、出身地の備前国(岡山)の地名から取ったそうです。明治になって二つの町が合併する際、「福岡市」か「博多市」かで大モメ。結局、市の名前は福岡に、駅名は博多にという妥協案で落ち着いたという経緯があります。だから福岡なのに博多駅なんです。
今はどう使い分けられている?
じゃあ今はどう区別されているのか。正直なところ、明確な線引きはありません。ただ、大まかに言えば博多駅周辺を「博多」、西鉄福岡(天神)駅周辺を「天神」と呼ぶことが多いです。
博多駅エリアは交通の要所。新幹線も止まるし、福岡空港からも近い。ビジネスホテルやオフィスビルが多く、どちらかというとビジネス色が強いエリアと言えるでしょう。駅ビルのアミュプラザやKITTE博多、少し歩けばキャナルシティ博多もあります。
逆に天神は、福岡最大の繁華街。デパート、ファッションビル、飲食店がひしめき合っています。「福岡で遊ぶ」といえば天神、というイメージを持つ地元民は多いはずです。若者が集まるのも天神ですね。
あと、屋台も微妙に雰囲気が違うんですよ。中洲(博多寄り)の屋台は観光客が多く、賑やか。天神の屋台は地元民やサラリーマンが多めで、少し落ち着いた雰囲気かもしれません。もちろん店によりますが。
博多ラーメン、博多弁、博多祇園山笠…なぜ全部「博多」?
ここで疑問に思いませんか? 福岡のラーメンは「博多ラーメン」だし、方言は「博多弁」。有名な祭りは「博多祇園山笠」。なぜ全部「博多」なんでしょう。
これは、博多という地名の歴史が古く、全国的な知名度が高かったからだと言われています。福岡という名前が誕生したのは江戸時代ですが、博多は奈良時代から文献に登場する由緒ある地名。商業都市として栄えた博多のブランド力は、福岡よりも強かったんです。実際、明治以降も「博多織」や「博多人形」など、伝統工芸品はすべて博多を冠しています。
福岡市民にとって、博多は単なる地名ではなく、文化や伝統を象徴する言葉なのかもしれません。とはいえ、公式名称としての「福岡」も重要です。福岡市役所、福岡県庁、福岡空港。行政や交通インフラは「福岡」なんですよね。個人的には、このあたりのバランス感覚が、福岡という街の面白いところだと感じています。
観光やビジネスで来るなら、どっちに行くべき?
「結局、博多と天神、どっちに行けばいいの?」という質問には、正直「両方行くのがベスト」としか言えません。でも、目的によって優先順位は変わってきます。
初めての福岡観光なら、まず博多駅から。交通の便がいいし、駅周辺だけでも買い物や食事は十分楽しめるでしょう。キャナルシティ博多まで足を伸ばせば、観光気分も満喫できます。屋台に行くなら中洲が近いですね。
一方、ショッピングやグルメをじっくり楽しみたいなら天神がおすすめ。百貨店も多いし、個性的なお店も点在しています。おしゃれなカフェでのんびり過ごすのも天神の楽しみ方。天神地下街をぶらぶら歩くだけでも意外と時間が過ぎます。
ビジネスで来るなら? これも目的次第ですが、会議や打ち合わせが博多駅周辺なら博多に、天神のオフィス街なら天神に宿を取るのが効率的です。
ただ、博多と天神は地下鉄で5分程度。実はそんなに離れていないんです。個人的には、時間があるなら両方のエリアを歩いてみることをおすすめします。雰囲気の違いを肌で感じるのが一番わかりやすいですから。
わかりにくさも含めて福岡の魅力かも
博多と天神の違い、理解していただけたでしょうか。歴史的には別の町だったけれど、今では曖昧に混ざり合っている。この「わかりにくさ」こそが、福岡という街の個性なのかもしれません。
厳密に区別する必要はないんです。博多駅で降りて天神で遊ぶ、それでいいんじゃないでしょうか。どちらのエリアにも魅力があって、どちらも「福岡」であることに変わりはありませんから。次に福岡を訪れる時は、ぜひこの違いを意識しながら街を歩いてみてください。新しい発見があるかもしれませんよ。

