博多水炊きの発祥と歴史|なぜ福岡で愛され続けるのか

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博多の郷土料理として全国に知られる水炊き。白濁したスープと鶏の旨味、シンプルだけど奥深い味わいが魅力です。でも、この料理がどこから生まれたのか、なぜ博多で根付いたのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。実は水炊きの誕生には、海外の料理文化が深く関わっていました。今回は、そんな水炊きの発祥と歴史、そして博多で愛され続ける理由について掘り下げていきます。

水炊きってそもそも何?他の鍋との違い

水炊きと聞いて、あなたはどんな鍋を思い浮かべますか?

多くの方が「鶏肉の鍋でしょ?」と答えると思いますが、実は水炊きには明確な定義があるんです。博多の水炊きの最大の特徴は、鶏肉や骨を水から煮込んでいくこと。調味料を加えず、素材の旨味だけでスープを作り上げるんです。

寄せ鍋やちゃんこ鍋との違いは、このシンプルさにあります。寄せ鍋は醤油や味噌で味付けした出汁に具材を入れて煮込みます。でも水炊きは鶏肉と野菜の旨味だけです。ポン酢や柚子胡椒で食べるのが一般的です。

あと関西風の水炊きもあって、こちらは昆布出汁を使います。博多水炊きと区別されることもあるんですが、どちらもシンプルに素材を楽しむという点では共通しています。

この「引き算の美学」こそが水炊きの魅力だと感じています。

水炊き誕生の物語|一人の料理人から始まった

水炊きの発祥には、実は一人の料理人の物語があります。

明治38年(1905年)、長崎出身の林田平三郎という人物が福岡で「水月」という店を開きました。この店こそが、博多水炊き発祥の店として今も営業を続けているんです。

林田平三郎は若い頃、香港に渡って料理修行をしていました。そこで学んだのが、西洋料理のコンソメスープと中国料理の白湯(パイタン)。この二つの技法を組み合わせ、日本人の口に合うように工夫したのが水炊きの始まりだと言われています。

面白いのは、当時の日本では鶏肉料理がそこまで一般的ではなかったことです。それでも博多では比較的鶏肉が手に入りやすく、しかも酒好きな博多っ子たちに鍋料理が受け入れられやすい土壌があったんでしょう。

そういえば、水炊きのスープを最初に味わう食べ方も、この頃から確立されたそうです。まるでフレンチのコンソメスープのように、まず出汁そのものを楽しむ。この「スープファースト」な食べ方、実は海外の影響だったんです。

なぜ博多で水炊きは根付いたのか

じゃあ、なぜ水炊きは博多で特に愛されるようになったんでしょうか。

まず博多という土地柄があります。古くから大陸との交易があり、中国や朝鮮半島の食文化を柔軟に取り入れてきた歴史があるんです。辛子明太子も元々は朝鮮半島の料理がルーツですし、博多には「外から来たものをうまく自分たちのものにする」文化があったと言えます。

料亭文化の発展も見逃せません。明治から昭和初期にかけて、博多には多くの料亭があり、接待や宴会の場で水炊きが提供されました。「まずスープを味わい、次に鶏肉を楽しむ」という独特の食べ方が確立されたのも、料亭での洗練されたサービスから生まれたものなんです。

それと、もう一つ大事なのが博多祇園山笠との関係です。この祭りの直会(なおらい)では、必ず水炊きが振る舞われるんだそうです。体力勝負の祭りを支えるスタミナ食として、鶏肉の水炊きが選ばれたんでしょう。余談ですが、山笠の時期に博多を訪れると、街のあちこちで水炊きの提灯を見かけます。

おそらく、こうした文化的背景と美味しさが相まって、水炊きは単なる鍋料理ではなく「博多の顔」になっていったんだと思います。

戦後から現代へ|観光と共に広がった

戦後、水炊きはさらに進化を遂げます。

昭和に入ると、博多が観光地として発展するのと並行して、水炊きも全国的に知られるようになりました。とくに昭和初期に創業した「新三浦」という料亭が、東京や大阪にも店を出したことで、「博多水だき」という名前が広まったんです。

面白いことに、家庭でも水炊きが食べられるようになったのは、意外と最近の話です。専門店の味を家庭で再現できる「水炊きセット」が通販で買えるようになったのは、2000年代以降なんです。

今では老舗の名店だけでなく、カジュアルに楽しめる新しいスタイルの水炊き店も増えています。完全個室の店や、今風の内装で若い世代にも人気の店が続々とオープンしているんです。ちなみに、最近ではもつの価格高騰で「もつ鍋よりも水炊きの方がコスパがいい」という声も聞きます。時代の変化とともに、水炊きの立ち位置も少しずつ変わってきているのかもしれません。

水炊きの「引き算の美学」が教えてくれること

水炊きの魅力は、やっぱりシンプルさだと思うんです。調味料を加えず、素材の味だけで勝負する。でもだからこそ、使う鶏肉の質、野菜の鮮度、火加減や煮込み時間がすべて味に直結します。ごまかしが効かない料理なんです。

これって、ある意味で日本料理の神髄じゃないでしょうか。素材を生かす、余計なものを足さない、引き算の美学。水炊きはその哲学を体現している料理だと思います。

実際、博多の老舗では鶏ガラを何時間もかけて煮込み、白濁した濃厚なスープを作り上げます。その手間と時間が、あの深い味わいを生むわけです。

あなたも博多を訪れたら、ぜひ本場の水炊きを味わってみてください。一口目のスープを飲んだとき、きっと「あ、これが本物か」と感じるはずです。そして、その歴史や文化を知った上で食べると、また違った味わいになるんじゃないでしょうか。

まとめ|水炊きは博多の歴史と文化が詰まった料理

博多水炊きは、一人の料理人が香港で学んだ技法を日本風にアレンジして生まれました。海外の料理文化を柔軟に取り入れる博多の気質、祭りや料亭文化との結びつき、そして戦後の観光発展と共に全国へ広がっていった歴史があります。

シンプルだからこそ奥が深く、素材の良さが際立つ水炊きは、まさに引き算の美学を体現した料理です。もし機会があれば、ぜひ本場博多で、その歴史に思いを馳せながら味わってみてください。きっと、ただの鍋料理以上の感動があるはずです。

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