福岡の方言、特に博多弁は「かわいい」と全国的に人気です。しかしながら、福岡県内でも地域によって方言が違うことを知っていましたか?博多弁、北九州弁、筑後弁、筑豊弁と大きく4つに分かれていて、同じ福岡県民でも「それ何?」となることもあります。この記事では、そんな福岡の方言を地域ごとに紹介しながら、日常で使える可愛いフレーズや、知っておくと役立つ表現をまとめました。
福岡の方言は実は4種類ある
福岡県の方言というと「博多弁」が有名ですが、実際には地域で大きく4つに分かれています。福岡市を中心とした博多弁、北九州市周辺の北九州弁、久留米など筑後地方の筑後弁、そして飯塚など筑豊地方の筑豊弁などです。
面白いのが、同じ県内なのに語尾やイントネーションが全然違うことです。博多弁の「〜と?」が、北九州弁では「〜ん?」になったりするのですが、県外の人からすれば「どれも博多弁でしょ?」と思われがちです。でも地元民にとっては明確な違いがあります。
元々「博多」は商人の街で、「福岡」は武士の城下町でした。那珂川を挟んで東が博多、西が福岡になります。商人言葉と武士言葉では当然ニュアンスも違っていて、博多弁は親しみやすく柔らかい印象の一方、福岡弁(がっしゃい言葉)は上品で格式高い感じだったようですが、今では(福岡弁は)ほぼ消えてしまいました。
博多弁の魅力は「語尾」にあり
博多弁の魅力は、なんといっても語尾です。「〜たい」「〜ばい」「〜っちゃん」など、小さい「っ」や「ゃ」が入ることで、どこか幼さを感じさせる響きになります。
「なんしようと?」(何してるの?)は博多弁の定番フレーズです。博多華丸・大吉さんの番組タイトルにもなっていて、福岡では老若男女が普通に使います。ちょっとした挨拶代わりにもなる便利な言葉なのです。
告白シーンでよく使われるのが「すいとーよ」(好きだよ)です。言われた方はドキッとしますが、標準語で「好きだよ」と言うより、なぜか博多弁の方が照れくささが和らぐ気がします。
若い世代だと「好きやけん」(好きだから)という表現も多いようです。語尾に「けん」をつけると理由を示す表現になるんです。「明日テストやけん、今日は勉強する」のように使います。関西弁の「〜ねん」に似た使い方でしょうか。それと、「よかよ!」(いいよ!)は快諾の定番です。短くてリズムが良いので、使いやすいフレーズだと思います。
地域別|こんなに違う福岡の方言
北九州弁は「〜ちゃ」「〜ち」が特徴的です。博多弁の「〜と?」が「〜ん?」に変わります。「なんしよん?」(何してるの?)という感じです。博多弁より少し強めの印象があるかもしれません。「きさん」(貴様)なんて言葉も出てきますが、これはかなり荒っぽい表現なので使う場面は限られます。
筑後弁は「〜ばい」「〜たい」が多用されて、訛りが強いと言われます。「こがしこ」(これだけ)、「ばさらか」(たくさん)など、他の地域の人には「?」となる単語も多いようです。久留米の年配の方が話す筑後弁は、同じ福岡県民でも聞き取れないことがあるほどです。
筑豊弁では「〜き」がよく使われます。「そげん言うき、やったんばい」(そう言うから、やったんだよ)みたいな。「ばっさ」(とても)、「とんぴんつく」(調子に乗る)など、独特の表現も面白いです。実はイントネーションは標準語に近いとも言われていて、聞き取りやすい方言かもしれません。
ちなみに、福岡県民同士でも出身地を当てるゲームができるくらい、地域差は明確です。語尾やイントネーションで「あ、北九州の人だな」とか分かってしまいます。こんな経験、他県の方にもあるのでしょうか?
日常会話で使える博多弁フレーズ
実際に使えるフレーズをいくつか紹介します。
まず「ばり〜」(とても)は若者がよく使う表現です。「ばりうまい!」(めちゃくちゃ美味しい!)、「ばり疲れた」(すごく疲れた)など、何にでもつけられます。博多弁初心者でも使いやすいです。
「なおす」は標準語と意味が違うので要注意です。「片付ける」という意味なのです。「それなおしとって」と言われて「修理するの?」と混乱する県外出身者は多いとかいいます。「からう」(背負う)も方言だと知らずに使っている福岡県民は結構います。ランドセルは「からう」ものなのです。
「とっとっと?」(取ってる?)は博多弁の有名な早口言葉としても知られています。映画館で席を確保しているか聞くときなど、日常的に使われる表現です。「とっとーよ」(取ってるよ)と答えます。
「しゃーしい」「せからしか」はどちらも「うるさい」「うっとうしい」という意味です。ちょっとイラッとしたときに出てくる言葉ですね。「あんたってしゃーしいね!」などと言われたら、ちょっと反省した方がいいかもしれません。
「あーね!」は若者言葉として広まりました。「ああ、なるほどね」の意味で、相づちとして便利なのです。でもこれは1990年代後半から広がった比較的新しい博多弁なので、年配の方は使わないかもしれません。意外と知られていませんが、この言葉は福岡発祥で、そこから全国に広がりました。
博多弁の早口言葉で遊んでみる
博多弁には有名な早口言葉があります。「おっとっと とっとってって いっとったとに なんでとっとって くれんかったと」。意味は「おっとっと(お菓子)を取っておいてって言ったのに、なんで取っておいてくれなかったの」です。
小さい「っ」と「と」の連続で、言えそうで言えない絶妙な難しさです。福岡県民でもスラスラ言える人は少ないかもしれません。キットカットやぷっちょを使ったバージョンもあって、飲み会のネタとしては鉄板ですね。
こういう言葉遊びができるのも、博多弁の特徴である「小さい『っ』の多用」があるからです。標準語では成り立たない面白さがあります。
橋本環奈さんや今田美桜さんなど、福岡出身の女優さんがテレビで博多弁の早口言葉にチャレンジする企画は人気があります。可愛い博多弁を聞きたい人は、そういう動画を探してみるのもいいでしょう。
方言と標準語が混ざる現代の福岡
今の若い世代では完全な博多弁を話す人が減っています。標準語と博多弁が混ざった「ネオ博多弁」とでも言うべき状態の人が多いのではないでしょうか。
テレビの影響もあって、標準語を話せる人が増えました。ただ、友達同士や家族と話すときは自然と方言が出ます。この切り替えができるのが、現代の福岡県民の特徴かもしれません。
「せ」を「しぇ」と発音する博多弁の特徴も、今ではほぼ年配者だけです。「先生」を「しぇんしぇー」と言う若者はまずいないです。でも「〜と?」「〜けん」「〜ばい」といった語尾は残っていて、これが博多弁らしさを保っているのかもしれません。
福岡に引っ越してきた人が「博多弁を話せるようになりたい」と言うことがありますが、無理に使う必要はないと思います。自然に耳に入ってくる表現から、使いやすいものを選んで取り入れていけばいいのではないでしょうか。変に意識しすぎると、かえって不自然になることもありますので。
まとめ|福岡の方言は地域で全然違う
福岡の方言は博多弁だけじゃなく、地域によって北九州弁、筑後弁、筑豊弁と分かれています。語尾やイントネーションが違うので、同じ県民でも出身地が分かるほどです。博多弁の魅力は「〜たい」「〜ばい」「〜と?」などの可愛い語尾で、全国的にも人気が高いです。ただ、現代では標準語と混ざった「ネオ博多弁」を話す人が増えているのも事実です。それでも日常会話の中で自然と出てくる方言は、福岡の温かい人柄を感じさせてくれます。福岡を訪れる機会があったら、ぜひ地元の人との会話を楽しんでみてください。方言を通じて、福岡の文化がもっと身近に感じられるはずです。

