福岡といえば「もつ鍋」と「水炊き」、この二大鍋料理が有名です。旅行で訪れた際、どちらを選ぶか迷う人も多いはずです。実は地元民でも好みが分かれるこの2つ、それぞれに深い歴史と魅力があるんです。若い世代はもつ鍋派が多く、年齢を重ねると水炊き派が増えるという興味深いデータもあります。今回は、両者の違いや楽しみ方、シーン別のおすすめを地元の視点から紹介します。
「もつ鍋」派の本音——パンチの効いた味が癖になる
もつ鍋の最大の魅力は、なんといってもあの濃厚でパンチの効いたスープです。にんにくと唐辛子がガツンときて、プリプリのもつと一緒に食べると、もう箸が止まらなくなります。
実際、福岡のホテルスタッフに聞いたアンケートでは、10人中7人が「もつ鍋派」だったそうです。理由を聞くと「鶏肉を食べる鍋は色々あるけど、もつを食べる鍋はもつ鍋だけ」「栄養満点で元気が出る」といった声が多数です。確かに説得力があります。
コラーゲンたっぷりで美容にも良いとされていますし、野菜もたっぷり摂れる。これは嬉しいポイントです。ちなみに、もつ鍋の歴史は意外と新しくて、戦後から広まったと言われています。1990年代に東京でブームが起きて、それが逆輸入される形で「博多名物」として定着したんだとか。面白い経緯だと思いませんか?
〆はちゃんぽん麺が定番です。福岡ではスーパーに当たり前に売っているちゃんぽん麺ですが、他県ではあまり見かけないらしく、これも博多ならではの楽しみ方でしょう。
「水炊き」の奥深さ——スープを味わう上品な体験
逆に水炊きは、もつ鍋とは対照的に「スープを堪能する鍋」なんです。まず最初に白濁したスープをそのまま飲むのが正しい作法です。これが驚くほど濃厚で、鶏の旨味がギュッと詰まっています。
明治38年創業の老舗「水月」では、創業者が香港で学んだ西洋と中華の調理法を融合させて生まれたのが博多の水炊きなんだそうです。水と鶏肉だけで炊いたシンプルなスープに、秘伝のダイダイポン酢をつけていただく。この引き算の美味しさが、水炊きの真骨頂かもしれません。
正若い世代には「作法があって敷居が高い」「ポン酢をつけるのが面倒」という声もあります。実際、10代から20代の約70%が「水炊きを食べたことがない」というアンケート結果もあったほどです。
とはいえ、一度食べるとその上品さと優しい味わいに魅了される人が多いのも事実なんです。年齢を重ねるにつれて水炊きの良さが分かる、という意見もよく聞きます。胃もたれしにくいですし、翌日に響かないのも大きなポイントです。個人的な意見ですが、二日酔いの日に食べる水炊きは格別に沁みますよ。
実際どう選ぶ?シーン別の選び方
じゃあ実際、どう選べばいいのか。地元の人たちの使い分けを参考にしてみましょう。
まず「スタミナをつけたい」「ガッツリ食べたい」なら、断然もつ鍋です。にんにくパワーで元気が出ますし、明日が休日ならなおさらおすすめです。友達とワイワイ楽しむ場面にもぴったりですね。あと、意外と大事なのが「翌日の予定」です。もつ鍋は確かににんにくが効いているので、大切な予定がある前日は避けた方が良いかもしれません。水炊きならその心配はほとんどありません。
反対に「接待」や「デート」など、少し上品な雰囲気で楽しみたい場合は水炊きを選ぶのが無難でしょう。個室でゆったり過ごせる老舗も多いですし、丁寧に作られた料理は会話も弾みます。
ちなみに最近では、もつ鍋と水炊きを「ハーフ&ハーフ」で楽しめるお店も増えています。どうしても迷ったら、両方食べちゃうのもアリです。贅沢ですが、旅行ならそれも楽しみの一つではないでしょうか。
地元民が教える、もっと美味しく食べるコツ
せっかく福岡で鍋を食べるなら、もう少し深く楽しんでみませんか。
もつ鍋の場合、実は「キャベツの切り方」が味を左右するって知っていましたか?元祖もつ鍋の店「楽天地」では、キャベツを手でちぎるんだそうです。包丁で切るより断面が増えて、スープがしみ込みやすくなるんだとか。家で作るときにも使えるテクニックです。
水炊きなら、ポン酢にこだわってみてください。老舗ではダイダイを使った自家製ポン酢を1年寝かせて提供しているところもあります。市販のポン酢も良いですが、柑橘の香りが強いものを選ぶと、水炊きの味わいがグッと引き立ちます。
それから、どちらの鍋でも「〆」は絶対に楽しんでください。もつ鍋ならちゃんぽん麺か雑炊、水炊きなら雑炊が定番です。スープに溶け出した旨味を最後まで堪能できる、これを逃す手はありません。おそらく、多くの人が「鍋料理なんてどこも同じでしょ」と思っているかもしれませんが、博多の鍋文化は本当に奥が深いんです。一度その違いを体験すると、また福岡に来たくなるはずです。
迷ったら、あなたの気分で選んでいい
もつ鍋と水炊き、どちらが優れているという話ではありません。ガツンとした味を楽しみたいか、優しい味わいを求めるか。その日の気分や一緒に行く人、翌日の予定によって選べばいいんです。地元民だって、そのときの気分で使い分けていますから。もし時間に余裕があるなら、滞在中に両方食べてみるのが一番かもしれません。どちらも福岡が誇る名物料理ですし、きっとあなたのお気に入りが見つかるはずです。美味しい鍋で体も心も温まる、そんな福岡の夜を楽しんでください。

