糸島移住が人気の理由とは?地元民が語る本音と注意点

暮らす福岡

福岡県糸島市への移住ブームが止まりません。世界的な情報誌で「輝く小さな街」として世界3位に選ばれたことで、さらに注目度が増しています。でも、実際のところどうなのでしょうか?美しい海と山、新鮮な食材、そして都市部へのアクセスの良さなど、確かに魅力的ですが、移住してから「こんなはずじゃなかった」と後悔する人もいるのが現実です。この記事では、糸島移住の本当の魅力と、あまり語られない注意点まで、率直にお伝えします。

なぜ今、糸島なのか?移住者が急増している背景

私も最初は「なんで糸島なの?」と思いました。福岡県には他にも魅力的な場所がたくさんあるではないですか。

実は糸島の人気には、いくつかの明確な理由があるのです。一番大きいのは「ちょうどいい田舎」であることです。福岡市の中心部である博多や天神まで、電車で40分程度。都会の便利さを捨てずに自然豊かな環境で暮らせる絶妙な距離なのです。

海と山の両方が身近にある地形も魅力的です。玄界灘の透き通った海、背振山系の緑豊かな山々、週末にサーフィンやハイキングを楽しむ人たちにとっては、これ以上ない環境でしょう。

それと、これは意外かもしれませんが、移住者を受け入れる土壌が元々あったことも大きいのです。1990年代から音楽フェスが開催されていたり、おしゃれなカフェ文化が根付いていたり、「よそ者」を排除するような雰囲気がないのです。イギリスの情報誌『MONOCLE』が世界3位に選んだのも、こうした複合的な魅力を評価してのことでしょう。単なる観光地ではなく、実際に「住める場所」として認められたわけです。

糸島ブランドの食材と、SNS映えするカフェ文化

ちなみに、糸島の食の豊かさって本当にすごいんですよ。

玄界灘で獲れる海の幸は新鮮そのものですし、天然真鯛の漁獲量が9年連続日本一というのは伊達じゃありません。冬になると各漁港に「牡蠣小屋」が出現して、獲れたてのカキを自分で焼いて食べられるのですが、これがもう最高なのです。ミルキーで濃厚な味わいは、一度食べたら忘れられません。

野菜も「糸島ブランド」として全国的に有名になりました。関東や関西の有名レストランのシェフがわざわざ買い付けに来るほどです。理由は糸島の独特な農業形態にあります。限られた農地で多品種を少量ずつ栽培する方式だから、一つ一つの野菜に手間をかけられるんです。

「またいちの塩」を使ったプリンも有名です。糸島の海水から作られた塩が、スイーツにも活きています。地産地消とはこういうことなのだなと実感します。

そして見逃せないのがカフェ文化です。海沿いのサンセットロードには、思わず写真を撮りたくなるようなおしゃれなカフェがずらりと並んでいます。ロンドンバスを改装した店とか、ウォールアートが印象的な店とか、インスタ映えという言葉が生まれる前から、「映える」スポットを作ってきた歴史があるのです。

実際のところどう?移住者たちのリアルな声

じゃあ、実際に移住した人たちはどう感じているのでしょうか。

都内から家族で移住した30代の方の話を聞くと、「環境のよさは想像以上だった」という声が多いです。子どもを安心して外で遊ばせられる、新鮮な食材が手頃な価格で手に入る、週末に気軽にビーチや山に行ける、こうした日常の積み重ねが、生活の質を大きく向上させているのです。

一方で、「仕事探しには苦労した」という声も聞かれます。リモートワークで既存の仕事を続けられる人はよいのですが、現地で新しく仕事を見つけるとなると、選択肢は限られます。糸島市の就職支援サイト「きっとみつかる糸島しごとさがし」もありますが、希望の職種がすぐ見つかるとは限らないのです。

興味深いのは、移住者同士のコミュニティが活発なことです。「先輩移住者に相談できる環境がある」というのは心強いです。糸島には地域コーディネーターという制度があって、移住前の相談から移住後のフォローまでサポートしてくれます。

移住して気づくのが「地域コミュニティ活動の多さ」です。自治会や町内会の活動が盛んなので、都会的な距離感を求める人は、少し戸惑うかもしれません。困ったときに助け合える関係が築きやすいということでもあります。総じて、「覚悟を持って移住した人」は満足度が高い傾向にあります。デメリットも理解した上で、それでも糸島の魅力が勝ると判断した人たちは、充実した日々を送っているようです。

移住前に知っておきたい、糸島暮らしの現実

でも、いいことばかりではないのです。これから糸島への移住を考えているなら、現実的な課題もしっかり把握しておく必要があります。

まず、車がないと不便です。これは地方移住あるあるですが、糸島も例外ではありません。JR筑肥線は通っているものの、駅から離れたエリアに住むなら車は必須です。バスの本数も都市部と比べれば少ないですし、ドライブ好きには天国かもしれませんが、車の維持費がかかることは覚悟しておくべきでしょう。

次に、意外と見落としがちなのが水道料金とガス代です。人口密度が低い地方では、インフラ維持コストが一人当たり高くなりがちなのです。糸島の水道料金は東京の1.5〜2倍とも言われています。プロパンガスも都市ガスより割高で、生活費全体では安くなっても、光熱費は上がる可能性があるわけです。

それから、平均年収の問題です。福岡県全体として、東京や大阪と比べると平均年収は低めです。糸島も例外ではありません。「収入が減っても自然豊かな環境で暮らしたい」という明確な覚悟がないと、後悔するかもしれません。

観光客の多さも、実は両刃の剣です。特に週末は道路が渋滞することもあります。「静かな田舎暮らし」を期待していると、ちょっとギャップを感じるかもしれません。案外知られていませんが、冬の寒さも侮れません。海が近いので潮風が冷たく、体感温度は気温以上に寒く感じることがあるのです。温暖なイメージを持っていると、冬の厳しさに驚く方も多いのではないでしょうか。

後悔しない移住のための準備ステップ

もし本気で糸島移住を考えているなら、段階的に進めることをおすすめします。

まずは「お試し移住」から始めてみてはどうでしょうか。糸島市は移住支援に力を入れていて、実際に住んでみる機会を提供しています。週末だけの短期滞在でもいいので、観光客としてではなく「暮らす人」の視点で糸島を体験してみてください。これだけでも見えてくるものが全然違います。

次に、住むエリアの選定です。糸島市は大きく3つのエリアに分かれています。市役所がある前原エリアは比較的便利で、初めての移住者向けです。二丈エリアは海が近く、マリンスポーツ好きにはたまらない環境です。志摩エリアはおしゃれなカフェが多く、観光地的な雰囲気があります。自分のライフスタイルに合ったエリアを見極めることが大事です。

住まい探しでは、糸島市空き家バンクの活用も選択肢の一つです。相場より安く物件が見つかる可能性があります。ただし、古民家の場合はリフォーム費用も考慮に入れておく必要があります。

仕事については、移住前に目処をつけておくのが賢明です。リモートワークが可能なら問題ないのですが、現地就職を考えているなら、事前に求人情報をチェックしておきましょう。農業に興味があるなら、新規就農者支援制度もあります。

子育て世帯なら、糸島市の子育て支援制度も要チェックです。子育て支援センターや病児保育、医療費助成など、充実した支援があります。結婚を機に移住する場合は、最大60万円の支援金が出る「糸島市結婚新生活支援金」も活用できるかもしれません。おそらく一番大事なのは、「なぜ糸島なのか」を自分の中で明確にすることです。単なる憧れではなく、具体的な理由があれば、困難にぶつかっても乗り越えられるはずです。

糸島移住は「覚悟」があれば最高の選択になる

糸島への移住人気には、確かな理由があります。自然の豊かさ、食の充実、都市部へのアクセス、そして移住者を温かく迎える文化、これらが組み合わさって、「住みたい街」として世界的に評価されているわけです。

ただし、車が必要なこと、光熱費が高めなこと、平均年収が都市部より低いことなど、現実的な課題もあります。こうしたデメリットを理解した上で、それでも糸島で暮らしたいという明確な理由があるのなら、移住は成功する可能性が高いでしょう。

お試し移住で実際の暮らしを体験し、住むエリアを慎重に選び、仕事や住まいの目処をつけてから移住するなど、段階的なアプローチが後悔しない移住につながります。糸島は、準備をしっかりした人には最高の移住先になりえる場所だと思います。

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